大悦兄弟物語【私たちが受け継いだモノ】
依田浩一(長男)=浩
依田光正(次男)=光
依田しのぶ(長男妻)=し
小さいころは、しょっちゅう喧嘩してたよね
光:そうだね。僕はよく近所の子どもを連れて遊んでましたけど、兄貴もたまにそれに参加したりしてたね。
浩:年が離れていなかったせいか、兄弟4人で遊んだりもしてたかな。
光:でも喧嘩はしょっちゅうだったよね、毎日のようにしてたし。
浩:でも子どもの時だけだったよ、オレが高3になった時なんかは、みっちゃんが1年生で入ってきて、一緒にバイトとかもするようになったもんね。
光:そう。そこで兄貴の友達とかとも一緒に遊ぶようになった。
浩:オレの友達も先輩って感じじゃないし。
光:そうだね、みんな仲間みたいな感じだね。
高3の時に1シーズンだけサーフィンずっとやってたんですけど、兄貴の友達が迎えに来てくれるんですよ、何しに行くわけじゃないんだけど、『みっちゃん行こう』とか言って。スキー行っちゃったりとかもあったなー。
浩:色んな所で『これがうちの弟だよ』って皆に紹介してたから、皆も『こーちゃんが行かないなら、みっちゃんを誘おう』みたいな感じになってたな。
親は凄いなと思ってた
光:今みたいに子どもがかわいいかわいいっていう親ではなかったよね。
浩:仕事してたからね。お袋は保険の代理店やってたり、朝はもやしの精製の仕事したり。働き者だよな。たまに親父の現場も手伝ってたし。
だから朝ごはんを一緒に食べてた記憶がない。
光:そうだね、家族で出掛けるなんてまずなかったね。
航空ショーに連れてってもらったくらいかな?
浩:年に1回そういうのがあるかないか。
光:そんな調子で親も忙しいから、兄弟で過ごした時間の方が多かったのかもね。
浩:親父もそうだけど、二人とも働き者だったよね。
親父は親父ですげーなと思ってたし、だって何にもない場所に家を建てちゃうんだから。
光:そうだね、小学校の低学年くらいから親父の仕事は大工って認識はあった。
学校から帰ってきたら職人さんが下小屋で削りもんとかしてたからね。
手伝いに行ってはよく掃除もさせられたし、ザラ板打ったりもしたし。
浩:『屋根裏貼れ』なんて言われてね(笑)
光:結局俺らの出来ることなんて限られてるし、くぎ打ちとかそういう様な仕事だけだったけど。
浩:大悦に入って本格的に一緒に仕事をする事になってからは、『技を盗め』って感じだった。
昔の人ってさ、教えてくれないから。
でも当時、親父が現場から帰っちゃったことが一番ショックだったなー。
『こんなんじゃダメだ!』って、怒って帰っちゃったの。
面と向かってあーじゃないこうじゃないとは言わないタイプだったから、帰るって行動が何かしらのメッセージだったんだろうなって、今になって思う。
光:手取り足取り教えてもらったわけじゃないけど、『こっちの方がバランスがいいんじゃない』っていう風にどちらかと言うとアドバイスに近かった。
僕らは経験がないし目で見てないから、感覚的にこのぐらい離した方がいいよとか、これぐらいのばした方がいいよとか大工の技を教えてくれたよね。
浩:『ちょっとよく見とけ、こんぐらいが丁度いいんだよ』みたいな感じだね。体に覚えさせるというか。
こんな大変なこと、やめた方がいいよ
浩:俺は大悦で修業したから、ノミの使い方とかは親父に教えてもらったんだよ。
手伝いでやっている時は刃物のこぎりぐらいしか使わせてもらえなかったけど、ノミとかカンナとかの刃物を使わせてくれて、どうやったら怪我するかとか、だから必ず『怪我しないように絶対こうやれ』みたいな話はされたよね。
光:昔は大工さんが全部墨付けたものに対して、キザミって穴を掘ったりする作業があるんだけど、僕が修業したところはそれがなかったのね。だからそれは大悦に帰ってきて教えてもらった。
でも親父の事を『親方』って感じには思ってなかったよね。
あくまでもお父さん、親父って感じだった。
仕事の姿勢としては『自分の家を作るように作れ!』って、毎日ずっと言われたよ。
あれこれ僕たちの仕事に対して口うるさくは言わなかったけど、そういう姿勢を背中で教えてくれたね。
浩:俺もそれを見て大工になろうかなって思ったからね。
ただ親父は継がせたくなかったらしけど、忙しくて大変だから。
だけど親父の背中見てて『あー格好いいな』って思わなかったらやんなかっただろうし、親父が『こんな大変なことお前らはやめた方がいいよ』、っていうのを押しのけてまでやってるってことは、やっぱり親父の存在が大きかったんだろうね。
光:たぶんね、ウチの親父のいいところは、ラーメン屋とかでもそうだけど、親父が頑張っちゃってると、息子が全然伸びないじゃん。その点に関しては、親父は若いうちからじゃ『お前たちがやれ』って感じだったから、俺たちを全面的に前に出してくれたよね。
浩:『オレは一人だからいいんだけど、お前らは兄弟がいるんだからその強みを活かせ』みたいな事はよく言われていたよな。
兄弟二人で働く事について
光:兄弟というか、ほとんどライバルみたいだよね。
カンナ削りしてても『オレは何本やったぞ!兄貴はどうだ!?』みたいな。
浩:大工の時とかはそうだよね、ただ俺が親父から社長を任されてからは、大工はお前頑張ってくれよ、現場の方は頼むよとか分担制になったもんね。
でもやっぱり、現場は本当に大変だと思う。
大変だからみっちゃんを手伝いに行くと、今度は社長業をやる人がいなくなっちゃう。
そしたら『兄貴大変だけど、自分の仕事していいよ、あとこっちやるから』って言ってくれる。
そういう風に言ってくれるのは、お互い尊重し合ってるからだし、兄弟だから気心も知れてるっていうのもあると思う。
光:もちろんそれもある。あとは完全に現場を任せてもらいたいと思ってるんだよね。
最後までクレーム無しで、引渡しまでやる。
そこまで任せてもらえるのが嬉しいっていうか…
それだけ認めてもらえて任せてもらっているんだから、だから頑張らなきゃって思うよね。
妻から見た依田兄弟
浩:犬みたいな?
し:そう、怒られても怒られても(笑)
光:怒られてるって思ってないんだよね。
たぶん兄貴は普通にしゃべってるつもりなんだよ、口が強いから周りから見てると怒っているような口調に聞こえるだけだよ。
浩:渡辺(設計)なんかも言うけど、『みっちゃん、よくあんなに怒られてて仕事やっていけるよな』って。
し:みんな思うよ、私だったら嫌だね。
でもお互い無くてはならないのは、兄弟ならではだと思います。
ちゃんと役割がはっきりしているから。
親父がやってきた大悦工務店を残していきたい
光:俺は親父がやってきた大悦工務店をそっくりそのまま残しておきたいな。
浩:それは俺もそう思ってる、せっかく親父が残してくれたものだから。
親父がやってきた大悦工務店をこれからも地域に残していく、それが一番かな。
やっぱりこの地域で本当に貢献できるように、どれだけ役立てるか?
お客さまにどれだけ助かったって言ってもらえるか。
それに限ると思うんだよね、会社を大きくしたいとかそういう事じゃなくて、地域の人にどれだけ役に立てられるかどうか。
会社の規模ではなくて、役立ちの幅を広げていきたい。
光:結局それイコール会社が大きくなっていくのと同じことだからね。
役立ちを大きくすれば大きくするほど、そういうことでしょ?
浩:そうだね。この前もお施主さんに『隣が困ってるから、じゃ大悦さんなんとかしてね』って言われたり、そういう風に任せて頂けるのはすごい嬉しい。
だから電話1本ですぐ飛んでいける距離で仕事がしたいし、地域に貢献できる会社で在りたいと思っています。